損失を出し続けても自分の方向性は正しいと信じてトライアンドエラーの日々が続く。
株の初心者には必要な期間かもしれない。必ず通る道かもしれない。
しかし俺がやっていた手法はあまりにもリスクが大きすぎた。
前回のお話はこちらです
第7話 株価形勢要因と無知トレーダー
前日ストップ高張り付きで1000円で買いたくても買えない状態で終わった銘柄が、今日の終値で平然と1000円を大きく下回っている。 悪いニュースがあったわけではない。 一体何が起きたというのだ。 &nb ...
狂っていく金銭感覚、見失っていく株のワクワク感
説明してきたようなリスクが大きい順張り手法に、自分の資金の3.3倍まで株を買えてしまう信用取引。
資金が減っていくスピードはものすごく速かった。
悠長に「試行錯誤に必要な失敗」などと言っていてはいけない負け方だった。
勝てるようにもなっていない初心者が信用取引に手を出すのは完全な間違いと言えた。
そして追加入金。
猛スピードで資金を溶かし、給料が入り次第追加入金、そしてまた溶かすというループ。
信用取引を使った無謀なトレードと高給の仕事のコラボレーションが生み出した負のスパイラルだった。
株に対する考え方や姿勢は変わっていった。
引くに引けない闘いがこの時すでに始まっていた。
株を始めたころは、簡単にお金を増やしていけるものという夢のような存在のはずだった。
スロットがそうであったように、やり方やコツを覚えてしまえば危なげなく思い通りに勝つことができて、お金を稼げるはずだと思っていた。
さらに株特有の複利の考え方で雪だるま式に増えていく。そう大金を掴むにはスロットの数倍簡単なはずだった。
ワクワクして楽しかった。実際のトレードは当然楽しくてたまらないが、株のことを考えるだけで楽しくて有意義な時間だった。
信用取引の存在を知り、スイングの手法も勉強し、ここからさらに本格的に株と付き合っていきお金持ちになるストーリーを描いていたところだった。
信用取引でスイングトレードを始めてから1か月が経つころ、思い描いていたストーリーとは真逆の道を歩んでいる自分がいた。
成功の光が見えたわけでもない、試行錯誤の末目指すべき方向性が見えたわけでもない。
正解が何もわからずただものすごい勢いでお金を減らしているだけなのだ。
次の給料日も、その次の給料日も、生活費以外のほとんどのお金を株口座につぎ込んだ。
家賃は給料から天引きだったため手取りとして振り込まれた金額のほとんどが株口座へ直行だった。
6月のボーナスの時は新入社員でも金一封として10万円が支給されたが当然それも株だ。
就職前だった数か月前までは数十万円のお金を1日で動かすことなどなかった。
スロットで稼いでも1日に数万円がいいところだ。
それが今では30万円近くのお金が給料として振り込まれ、それをほぼ全ていっぺんに株口座に振り替える。
そして1か月かけてそのお金を全部なくしていく。
金銭感覚が急激におかしくなってしまった。
金銭感覚だけではなく、株に対する姿勢もおかしくなり始めていた。
負けるのが当たり前なのである。
失敗となるトレードを積み重ね、資金が減っていくのが既定路線になっている。
まるでそれを受け入れるかのように同じようなトレードをやり続け、当然のように同じ結果が積み上がる。
リスクの高い順張り投資を選んでしまったこと。
それを見直さずに同じ手法にこだわり続けてしまったこと。
勝てないうちから信用取引を始めてしまったこと。
給料の良い会社に恵まれてしまったこと。
これらが重なったことが俺のトレーダー人生を初っ端から狂ったものにさせたのだろう。
株で大成功してお金持ちになっていく夢を現実的なものとして見れなくなっていた。
そういう意味も含め、株に対する楽しさやワクワク感は薄れてきていた。
しかし闘争心だけは失っていなかった。
ここまで数十万の給料を短期間で犠牲にしてしまったのだから、無駄にしてはいけない。
同年代の株初心者が最初の数か月でつぎ込むお金としては絶対に多い方だという思いがあった。
これだけお金を注いだのだから勝てるようになるはずだと思った、いや思いたかった、いや自分に言い聞かせた。
ここまでやってきたのだから絶対に株の勝ち組にならなくてはいけないのだ。
引くに引けない闘いになっていたのだ。
この後に入ってくる給料・ボーナスや、さらに株につぎ込むことになる金額を考えればまだまだ余裕で引き返せる位置だったのに。
結局、ストップ高銘柄を翌日投資法については3か月も負け続けてさすがに手法的に間違っていることに気づいた。
この手法を諦めたことは緩やかな成長の一歩だったかもしれない・・。
しかし順張り投資はやめることができなかった。
本来なら上下の波を意識した逆張り投資や押し目買い投資に切り替えるのが正解だったように思う。
やはり俺の順張り脳は変わらなかった。性格的なものや本能的なものなのかもしれない。
最初の方に読んだ本の影響でそういう脳や性格になってしまったのか、元々の性格のせいでその本を選んでしまったのか、それはわからない。
とにかくこの後も俺はずっと順張りトレードを続けることになる。
その結果苦しい株の日々はしばらく続くのだった。