ゴールデンウィーク、この時が来るのを待ちわびていた。
この日この時に照準を絞って株を本格的に始めることを決めていたからだ。
前回のお話はこちらです
第3話 新卒入社直後の日々
2006年4月、株の信用取引への期待を胸に無事就職することになった。 株で頭いっぱい胸いっぱいの俺はまず社会の荒波に揉まれることになる。 前回のお話はこちらです 新人研修合宿と営業所初出勤 希望順位の ...
久々のパソコントレード
入社するまでの間、信用取引開始に向けての練習期間だ準備期間だと言いながらも手応えのない日々が続いていた。
株を開始してから期間が経過するにつれ、知っている会社の株以外も平気でトレードするようになっていた。
上昇率ランキングなどを見て、チャートの形を見て判断して銘柄を選ぶ。
そうすることで買える銘柄の選択肢は大幅に広がったし、知らない会社の株を買うことに何の抵抗もなくなっていた。
しかしお金の方は思うように増えないどころかジリジリと減り続けた。
それでも様々な銘柄に手を出してトレードし続けることでそれなりに経験を積んでいるような気にはなっていた。
準備期間なのだと自分に言い聞かせた。
入社した後の研修中は一旦トレードをやめていた。
研修中にトレードをすることはもちろんできないが、株を長く持ち続けるスイングトレードのスイングも難しかった。
ランキングなどから銘柄を選ぶようになっていたのだが、携帯電話だけでは難しかったからだ。
仕事をしながらの兼業投資家として成功を目論む以上、昼間に株のトレードをできなかったりパソコンで見ることができないのは当然の環境だが、夜もパソコンを使っての銘柄選びができない環境ではさすがに続行不可能と判断したのだ。
それでも株の事が頭から離れることはなく、よく売買していた銘柄の株価をチェックしたり、夜に株の本を読んだりしていた。
本を読んだりチャートを眺めているだけで、復帰したら試してみたいと思えるアイディアは浮かんでくるのだ。
そしてその復帰はゴールデンウィークと決めていた。
久々にパソコンのある環境に戻れるだけではなく、デイトレードもできるチャンス。
就職してしまった以上、こんなチャンスは年に3度しかない。
株の相場は平日しか動かないため、土日祝日休みのサラリーマンが家でデイトレをやるチャンスは長期休暇の時だけなのだ。
ブラック企業という噂の立つほどの企業でもあるにも関わらず、年3回の長期休暇は9連休前後が必ず確保されていた。
ゴールデンウィークの中のカレンダー上赤くない日だけがデイトレできる貴重な日だった。
更には最初の給料日である。
手取りで25万円ほどだったと記憶している。まだ入社して研修しか受けていないのに・・・しかも手取りで。
俺はその給料を当然のようにほぼ全て株口座にぶちこんだ。
信用口座は未だ開けていなかった。
就職したらすぐに申請して審査を通すつもりでいたのだが、証券口座に入っている資金が30万を切っているようでは申請しようにも無理があった。
まず信用取引というのは最低の元手となる保証金というものが30万円必要なしくみになっている。
信用口座が開設できたところで30万円未満の資金しかなければ信用取引はできないのだ。
しかしここで初任給をぶちこむことで資金が増えるのでついに念願がかなって開設できるかもしれない!
迷いなどなかった。
肝心のトレード。
入金したことで再開前の口座資金は45万円ほどになっていたが、GW中のトレードで50万円に増やすことができた。
これは今までにない勝利だった。今までの経験や仕事の研修で株自粛中だった間に浮かんだアイディアをうまく活用することができたと感じた。
初めて「株って簡単かも」と思えた。
今まではやはり資金が少なすぎたんだ!
やはり資金が多い方が有利だったんだ!
さらに信用取引を始めたらさらに有利になること間違いなし!
そんな大間違いなことをその時は真剣に確信した。
そしてこの勝ちが「デイトレなら勝てる」という後の大誤算の元凶にもなったと言えるだろう。
この興奮の勢いで俺は信用口座の開設依頼を出してみた。
オンラインでのアンケートがあったが、審査が通るよう精一杯の回答をして結果を待つことにした。
トレードはまたしばらくお休みだ。
次の長期休暇までお休みというわけではない。
研修が終わるまでのあと1か月の辛抱だ。
それが終わればスイングトレードでの再復活だ!
その頃には信用取引もできるようになっているかもしれない。
スイングトレードのための本も買って勉強しなくては。
希望に満ちたゴールドンウィークを過ごし、研修の地である関西に戻るのだった。
約10日ぶりとなった同期達との再会。
話題の中心はやはり各々の営業所の印象についてだった。
上司が最悪だった。先輩にいきなりキレられた。理不尽さに耐えられない。今後が不安。
ネガティブな言葉の方が印象に残った。やはり営業所によって当たりハズレがあるようだった。
そして、講師役の人から衝撃の事実が告げられた。
同期の一人が会社を辞めたというのだ。
営業所が大ハズレで合わなかったのか、研修が辛かったのかはわからないらしいが、早くも一人脱落してしまったのだ。
3年以内どころか1か月で辞めてしまったけどその同期の営業所の上司は大丈夫なのか・・?
どんな経緯でそうなったのかは知らないが、波乱が起きたのは間違いなかっただろう。
1か月後、無事に研修を終え、缶詰だった研修の地とも別れを告げることができた。
いよいよ営業所で本格的に働き始めるのだ。
そして何より株の再復活だ。
信用口座は開設完了済となっていた。