友人への相談をきっかけにして突如実現したマルチモニター環境。
これを機に俺の負け続けトレード人生は少しずつ流れを変えることになる。
前回のお話はこちらです
第17話 株トレードのモニター環境
2010年の年末、埼玉県の草加市という場所に引越した。 転勤や異動のようなものだ。 色々変わった点はあったが、移籍前と同じ内容のサービスの契約をとる仕事だった。 一方株への力の入れ具合も徐々に熱を帯び ...
複数画面の優位性
それまで、ノートパソコン1台の画面の何を見てトレードしていたか。
板という画面を並べていた。
買い注文と売り注文が並んだ、注文状況画面のことだ。
事前に狙いをつけた銘柄の板画面をノートパソコン画面いっぱいに12銘柄並べていた。
板画面のみでトレードしている凄腕トレーダーも存在するのだが、凡人の俺は5分足チャートという物も頼りにしていた。
株を買ったり売ったりする時は必ず事前にチャートをチェックしていた。
それゆえ板画面を並べた12銘柄のうち動きがあった1銘柄に狙いを定めると、その銘柄のチャート画面に切り替える。
そしてそのチャートを見ながら買うタイミングを窺い、買った後は売るタイミングを窺った。
買った後はまた12銘柄の板画面に切り替えることもあるが、買った銘柄にほぼ意識が集中するためその銘柄のチャートを眺める時間が長かった。
その監視体制には大きな問題があった。
チャート画面に切り替えている間は他の11銘柄の様子を監視することができないのだ。
1銘柄に集中していた後に12銘柄の画面に戻った時に、他の銘柄が動いていることに遅れて気づくのだ。
慌ててその銘柄のチャートを開くと大きく値上がりをしている!
やはり俺の狙いは合っていた、俺の読み通りこの銘柄は大きく上がりそうだ!まさにその動きが始まっているではないか!
急いでその銘柄を買う。
これを飛びつき買いという。ジャンピングキャッチとも呼ばれる行為だ。
そのまま大きく上がって利益を得ることもあるからそのような行動に出る。
しかし確率的に考えればその勢いが長時間続く確率は低いのだ。
上昇の波の後には下落の波が来る、それはデイトレードの短い時間軸でも同じだ。
大きく上がった末に勢いが止まり反転すれば、その後の下落の波も大きくなる。
下げの波をやり過ごせばまた上昇に転じて利益になることもあるが、2回目の上昇は勢いが弱く高値にを超えないことも多い。
最悪の場合は、最初の上昇がダマシ上げでその日は下落の波のターンのまま終わるパターンもある。そうなれば大負けだ。
さすがにワンパターンで負け続ければ学習もするし失敗に全く懲りないわけではない。
すでに大きく上げている最中の株を飛びつき買いするリスクは痛いほど理解していた。
しかし俺にはチャンスが限られていた。
前日狙いを定めた12銘柄のうちトレードチャンスが訪れる銘柄は多くても3つか4つ。それ以外の銘柄は動かずにノーチャンスという結果になる。
前日の読みがヒットして急上昇の動きを見せつつある銘柄は俺にとって貴重なトレードチャンスに他ならなかった。
すでに急騰中でリスクが高まっている状態でも、数少ないチャンスを完全スルーしてしまう方が悔しいと思ってしまった。
こびりついた順張り脳と貧弱なモニター環境のコラボレーションが大負けの悲劇を生み続けた。
呼吸をするように負け続けた原因はこの原理によるところが大きかった。
しかし、マルチモニター環境に進化したことによりやっとこの状況を脱することになる。
ノートパソコンの画面には板画面を表示させ続け、もう1台の大きいモニターでチャートを表示する。
もういちいちマウス操作で画面を切り替えなくていいのだ。
しかも、小さなノートパソコンの画面では画面いっぱいに1つのチャートを表示させていたが、大きなモニターには複数のチャートを並べることができた。
株ツールの設定を調べ尽くし、モニターの画面に9銘柄のチャートを並べることも可能になった。
他にも、当日の値上がり率ランキングを表示させたり、株の掲示板を自動更新で表示させたり、次から次へと監視環境を進化させる案が生まれていった。
画面切り替えのロスがなくなっただけでなく、限られていたトレードチャンスを大幅に増やすことに成功したのだ。
チャンスは少ない、という意識から焦ったトレードをしてしまうことが多かった。
そのようなトレードはたいていが負けトレードになり、そのうちの多くは大負けトレードだった。
モニター環境の増強は多くの面でトレードを有利にさせていった。
長い間負け続けた俺にやっと勝ち組トレーダーへの扉が開かれた。
これまでどれだけ不利な環境でやり続けてきたのか。
気づくのがあまりにも遅すぎたが今までの環境で厳しい株式相場を勝ち抜いていくには無理がありすぎた。
しかしこうなればもう大丈夫だ。
ここに来てついにまともに闘えるようになったんだ。
マヌケに思える今までの負けだって決して無駄じゃない、負けの経験も活かしてここから這い上がっていけばいい。
久々に意気揚々と希望に溢れる感覚に満たされた。
2画面にした直後にノートパソコンとモニターを1台ずつ追加購入し4画面に進化させた。
表示させたい内容のアイディアが止まらなかったのだ。
株への情熱は過去最高水準にまで燃えたぎっていた。