2010年の年末、埼玉県の草加市という場所に引越した。
転勤や異動のようなものだ。
色々変わった点はあったが、移籍前と同じ内容のサービスの契約をとる仕事だった。
一方株への力の入れ具合も徐々に熱を帯びていくことになる。
前回のお話はこちらです
第16話 株との再会
仕事に夢中の日々は充実していた。 最初は借金返済のためのお金稼ぎだったが、いつしか仕事自体を楽しめるようになっていた。 契約が全く取れなかった2か月間の苦しい時期があったからこそ、苦難を乗り越えた後は ...
友人に相談しマルチモニターデビュー
同じケーブルテレビ会社の違う支局に移籍した。
俺よりも先にこちらに移っていた先輩からもっと稼げてもっと良い支局があって人が足りてないという話を聞き、動いた結果だった。
実際には今までの派遣元だった企業を退職し、草加市局には個人事業主として入ることになった。
ケーブルテレビ会社の正社員でも契約社員でもバイトでもないし、間に派遣会社が入っているわけでもない。
そんな形態だったためか基本給は最初の3か月のみでその後は歩合のみだった。
朝の出勤も週1度のミーティングの時だけで他は営業現場に直行でOKだった。
お客に契約してもらうサービス内容は同じだが、以前はアパート・マンションの住人相手に営業していたのが、こちらでは一戸建て住宅を相手にする部署だった。
その時点で先輩から聞いていた話とはだいぶ異なっていた。不安は大きかったがやそれでもやるしかなかった。
細かい説明は省略するが、地デジ化の波に乗っかった営業を行っていた。
地デジアンテナが建っていない家庭に、ケーブルテレビの回線を使うことでアンテナ無しで地デジ化対応ができる。そのついでに例の有料3サービスの営業もする。
ここでもやはり初月は大苦戦することになったが、そこでも熱く指導してくれる先輩に恵まれて翌月からは安定して大きなお金を稼ぎ続けることができた。
そのおかげもあり株の累計損失はペースを緩めることなく増え続けた。
専業になった後退場した時に考えていた燃え尽き・モチベーション・精神状態などは単なるイイワケにすぎなかった。
再就職後はずっと充実した生活を過ごして精神状態は雲一つない晴天のようだった。
トレードは最初の会社の時とは違い平日休みで家でトレードができるし出勤日も朝トレードする時間がある。
株をやる上でベストな環境を手にしていたのだ。
にも関わらず勝てない。安定のマイナス続き。
センスがなかった。努力が足りなかったし努力の方向も間違えていたのだろう。
しかし株を辞めようとは思わなかった。やはり株が好きだったのだ。
再び専業になりたいとは思わないが、今の生活環境のまま株を続けていきたい。
続けるのならばそろそろ何か変わらなければならない。
退場後に復帰した2010年中盤から約2年間のトレード内容やトレード手法はほとんど覚えていないのだ。
それくらい惰性で株をやっていた。当たり前のように稼いだ給料を株に垂れ流して溶かしていた。
覚えているのはただひたすら負け続けていたことと、たびたび計算していた累積損失額の変遷くらいだろうか。
いや、2012年に入るころ1つだけ大きな変化があった。
モニター環境の変化である。
株を始めて6年、脱サラ以降デイトレードのスタイルになってから3年、累計損失額は1000万を遥かに超えて、ここにきてやっと1画面では足りないということに気づいたのだ・・。
今となっては信じられないがそれまではずっとノートパソコン1台でやっていた。
画面を増やすことに興味を持ったことは当然あったが、接続や設定などが難しそうだと思っていた面もあり、それをイイワケにして今までサボってしまっていたのだ。
しかし何かを変えなければいけないと思い立てば、そこに手を付けることになるのは自然な流れだった。
立川支局時代にFXをやっていた同僚がいた。
入ってきたのは俺より2か月ぐらい後だったが年齢は同学年だった。
金への執着がすごく、夜の9時を回っても営業し続けてクレームを受けたこともあるような鉄人、いや変人だった。
そんな彼がFXをやっていることは一緒に働いている時に聞いていた。
彼はFXを始めてすぐにトレード用パソコンを買い、モニターも買い揃え6画面を使ってトレードしていると自慢げに話していた。
ひらめきも行動力も俺とは違い優秀だったのかもしれない。
一歩も二歩も遅れてしまったが俺もモニターを増やしたい。
久々に彼に連絡をしてみた。モニター増設の方法を質問したのだ。
返事はすぐに来て教えてくれた。想像していたよりも遥かに簡単だった。
ノートパソコンからモニターにケーブルを繋ぐだけだというのだ。設定も簡単らしい。
すぐにネットショップでモニターを購入し、マルチモニターデビューとなった。
ノートパソコンの画面とノートパソコンからHDMIケーブルを繋いだモニターの画面で2画面だ。
なぜ今まで1画面でやり続けていたんだ。
専業の時にモニターが多ければ何か違う結果が生まれていたかもしれない。
実際マルチモニター環境は便利だった。
2画面を使ってのトレードは1画面とは全く違った。
マウス操作で画面を切り替える必要なく多くの情報を同時に表示しておくことができるのだ。
これを機に俺の株人生はようやく軌道に乗り始めることになるのだった。