前日ストップ高張り付きで1000円で買いたくても買えない状態で終わった銘柄が、今日の終値で平然と1000円を大きく下回っている。
悪いニュースがあったわけではない。
一体何が起きたというのだ。
前回のお話はこちらです
第6話 ストップ高あと追い投資法
本の手法を鵜呑みにした俺はスイングでの順張り投資を続けることになる。 しかもストップ高銘柄を翌日の朝一で買うという一般的な順張りのさらに上を行くいわばド順張りだった。 前回のお話はこちら ...
株価の波と需給要因
朝は前日より高い株価で始まり、1日の相場が終わってみると前日より安い株価で終わっている。
俺が買ったのは朝始まった時点の株価だ。
つまり大損状態だ。
会社の仕事が終わり帰り道で意気揚々と携帯で株価チェックをすると絶望やパニックを通り越してただただ呆然とした。
1日の仕事を終えた達成感も解放感も味わうこともできずに途方に暮れた。
自宅に帰り着くとすぐにパソコンを開き、その銘柄の掲示板を見に行った。
株はありがたいことに全ての銘柄において個別に掲示板のスレッドが立っている。
そこではその銘柄のホルダーや興味を持っている人達がああでもないこうでもないと毎日意見交換を交わしている。
早速今日の投稿を全てチェックしてみる。
一体今日何があったのだ。
何が原因で株価が下がったのか。
しかし掲示板を隅から隅まで読んでも全く釈然としなかった。
俺が知りたい答えを誰も書いてくれていないどころか、俺と同じような疑問を抱いている人の投稿すら見当たらないのだ。
「昨日あれだけ上げたのだから今日は仕方ない、明日に期待だ」
そんな内容を書いている人もいた。
俺は素直に思った、「それならなぜ昨日は売り注文より買い注文の方が圧倒していたのか」と。
冷静に考えれば、俺は先にまずそれを調べるべきだったのかもしれない。
なぜ今日下がったのかもわからないが、なぜ昨日上げたのかも知らないのだ。
ランキングからストップ高銘柄を見つけ、その中で見比べて最も強そうに見える銘柄を選んでいたが、その根拠としていたのはその日までの日足チャート、当日の5分足チャート、最後の板状況つまり注文状況、などだった。
その会社の株が何をきっかけにそんなに買われることになったのかについて調べていなかったのである。
ストップ高張り付きで、買いたい人が買えないまま終わっている。
なぜそうなったのかは知らないがこの結果が全ての真実を物語っている、それで充分ではないか、そう思っていたのだ。
その考え方は一見正しく思える部分もある。
実際、何のニュースもなく凄い勢いのストップ高張り付きで終わる銘柄もあるし、逆にビッグニュースが出た会社の株がストップ高までは買われないことだってある。
今ここで全てを語り尽くすことはできないので割愛するが、株価が大きく動く場合でもその要因の候補は数多く存在し、そして必ずしもその要因が特定できるわけではない。
多くの投資家が理由がわからないままストップ高する銘柄すらある。
しかし、だからこそ調べるべきだったのだ、それぞれの株がストップ高した要因・きっかけを。
好決算、業務提携、新商品の開発や量産開始など、明確なビッグニュースがあったのであれば、その銘柄の株価は勢いが長く続きやすいし、もし勢いが止まり株価が落ちてきても下の波は小さく終わる場合が多い。
そのビッグニュースで会社の将来を有望視した投資家の中には下の波のターンを待って買いに行く人達が存在するからだ。
そんな行動を取る投資家が多ければ株価は下がりづらくなるし、下がってこないからと待つのをやめて高く買う人も出てくる。
そうなるとまた上の波が押し寄せ、株価は高値をさらに更新していく。これが勢いが続く銘柄の正体だ。
ストップ高順張り投資法にも当たり銘柄は存在するわけだ。
一方、何のニュースも見当たらない会社の株だったり、大したことないプチニュースがきっかけでストップ高した株は、理由もわからない勢いだけのストップ高の可能性が高い。
まさに俺のように勢いに乗っかろうとしたトレーダーの買いが殺到したことでストップ高になることもある。
行列ができていると並んでみたくなるのと同じように、買いが買いを呼ぶのだ。
立派なニュースもなく勢いだけのストップ高をした銘柄が一旦その勢いを止めた時、果たしてどうなるか。
当然大きな下の波がやってくる。暴落の始まりだ。
「勢い」以外にその株を買う理由が見当たらないのだから、勢いが止まって下の波がスタートした後に買う人などほとんどいないのだ。
売りたい人の方が買いたい人より圧倒的に多い状態となり、今度は売りが売りを呼び大暴落が起こることになる。
今となってはこのような説明ができるが当時の初心者の俺はこのカラクリを理解できていなかった。
にも関わらず俺はこの手法をすぐやめることはできなかった。
本にしっかりと書かれていた上に俺のニーズにピッタリ合っていたため、このやり方を極めようと思い込んでいたからだ。
ストップ高した要因を探して吟味することをせずに、チャートの形などから成功例失敗例の仮説を立てては再びトライする。
この「失敗と再トライの日々」は悲しくもこう言い換えることができてしまうのだった。
「損失と追加入金の日々」と・・・。